確率母関数は、離散確率変数に対して定義される関数で、その確率分布の特性を表します。
特に、非負の整数値を取る離散確率変数に対して用いられます。
確率母関数は、確率変数のモーメント(特に平均や分散など)を求めるのに役立ち、また、確率変数の和の分布を扱う際に特に有用です。
確率母関数は統計検定1級の試験範囲に含まれています。
1. 確率母関数の定義
確率変数が取り得る全ての非負整数値に対する確率を用いて、確率母関数は次のように定義されます。
ここで、は期待値を示します、は実数で、通常はの範囲で考えられます。
2. 確率母関数の使いどころ
確率母関数の階導関数をで評価することにより、確率変数の次モーメントを求めることができ、ここから期待値と分散を求めることができます。
実際にを微分して確認してみます。
上記の微分した結果にを代入すると、次のようになります。
期待値はとなります。
分散は公式を使って次の計算で求めることができます。
3. 確率母関数の導出
実際に二項分布を例に確率母関数を導出します。
二項分布の確率質量関数は、次のように定義されます。
確率母関数の定義に従って、二項分布の場合のを設定します。
二項分布の確率質量関数を代入します。
ここで、とを組み合わせてとして、式を変形させます。
下記の二項定理を使用して、式を整理します。
、とした場合、次のように整理されます。
以上が二項分布の確率母関数の導出になります。
4. 期待値の導出
期待値は確率母関数の一階微分にを代入することで得られます。
先ほど求めた二項分布の確率母関数を使用して、二項分布の期待値を求めてみます。
を代入すると次のように求めることができます。
となるため、このように確率母関数から期待値を求めることができました。
5. 分散の導出
分散は確率母関数の二階微分にを代入した値を使用して、次のように求めることができます。
先ほど求めた二項分布の確率母関数と期待値を使用して、二項分布の分散を求めてみます。
を代入すると次のように求めることができます。
これを利用して分散の公式にあてはめます。
このようにして確率母関数から分散を求めることができました。