最尤推定法は、パラメータ推定の方法の一つです。
観測されたデータに基づいて、統計モデルのパラメータを推定する際に用いられます。
最尤推定法の目的は、観測データが得られる確率(尤度)を最大にするパラメータの値を見つけることです。
1. 尤度関数
尤度関数は、統計モデルのパラメータを特定するために最尤推定法で使用される重要な概念です。
尤度関数は、観測データが与えられた条件下での、モデルパラメータの確率(または尤度)を表します。
言い換えると、尤度関数は、特定のパラメータ値が与えられたときに、観測されたデータセットが得られる「尤もらしさ」を数値化します。
尤度関数は、確率密度関数を基にして定義されます。パラメータベクトルを、観測データセットをとした場合、尤度関数は以下のように表されます。
ここで、は、パラメータが与えられたときの個々の観測値の確率です。
尤度関数は、これらの確率の積として定義され、全観測データが特定のパラメータセットに基づいて生成される「尤もらしさ」を評価します。
2. 最尤推定量
最尤推定量は、最尤推定法によって得られるパラメータの推定値です。
尤度関数を最大にするパラメータ値、つまり観測データが得られる確率(尤度)を最大にするパラメータ値を指します。
3. 対数尤度関数
実際に最尤推定量を求める際に、尤度関数を対数変換して求めていきます。
尤度関数を対数変換したものを、対数尤度関数と呼びます。
対数尤度関数は、最尤推定法でパラメータを推定する際に広く使用されます。
この変換は、計算の簡素化、数値的安定性の向上、および解析的な取り扱いの容易さを目的として行われます。
尤度関数をとしたとき、対数尤度関数は次のように定義されます。
4. 尤度方程式
尤度方程式は、尤度関数を最大化するための条件を定式化した方程式です。
具体的には、対数尤度関数(または尤度関数)の最大値を与えるパラメータの値を見つけるために、対数尤度関数をパラメータに関して微分し、その導関数(勾配)をゼロに設定することで得られます。
この尤度方程式を解くことで、最尤推定量を求めることができます。
推定したいパラメータをとした場合、尤度方程式は次のように定義されます。
※尤度関数を使用する場合は次のように定義されます。
5. 例題
数式による説明だけだと、理解しずらい箇所もあるかと思いますので、例題を通して解説していきます。